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■「序」に代えて

近年の生徒や保護者は、学校に対して自らが「コミュニティの形成者」であるとの自覚を欠き、支払った対価にふさわしいサービスを享受する権利を主張する「消費者」としての立場をとる傾向を強めているとの見方がある。前述した、授業の成立要件における生徒と教師の意識の相違は、この見方を裏付けるものであろう。教壇に立つ者は、《生徒・保護者=教育サービスの享受者・消費者》との認識が社会の中で確実に芽生えつつあることを、好ましいものか否かの判断はひとまず留保したうえで、一定の事実として受け止めておく必要がある。


ちなみに、平成19年度の新卒就業者は「デイトレイダー型」と名づけられたそうであるが、これもコミュニティ形成者としての自覚欠如によるものと考えられる。会社を育て自らも共に育つという発想を持たず、自らの益になる環境を求め絶えず移動するという行動選択基準が優位に存在するようである。


さて、授業や学校をコミュニティと捉え、その維持・改善に自らも責任の一端を担うという自覚を、生徒の側に期待しにくくなるとすると、今後、教室では何が起こりうるのだろうか。授業が分かりにくいと感じれば、生徒は自らの関わり方を省みることなく責任のすべてをサービスの提供者たる教師に帰そうとするであろう。学習内容に対して興味が持てない、将来に対して展望が描けないという状況に対しても、生徒の側での自助努力による改善は見込めず、すべては教師の側の知見と技術に委ねられることになるのは想像に難くない。


以上を踏まえ、分かりやすい授業を実践し、生徒のやる気を引き出すために、教師に求められる要件を考えてみたい。これらの要件は、相手に働きかけ、行動を引き出すという意味において、広義のコミュニケーション能力として定義されうる。現場で実際に生じている問題点を取り上げ、その原因や背景を探ることで改善に向けてのヒントが得られるはずである。

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